天然皮革は、ブランドロゴが入ったパッチや肘当て、衿裏などに部分使いされていることがあります。
今回は、表面には見えない部分に使用した天然皮革から色泣きが生じた事例を紹介します。
監修/クリーニング綜合研究所
着用しようとしたら、ボタンの周囲がうす黒くなっているのに気が付き、持ち込まれたもの。
ドットボタンの補強に用いられていた天然皮革の染色が不堅ろうであったため、ドライクリーニングによって染料が溶け出して生地を汚染したもの。
取扱表示では、水洗いを禁止して、ドライクリーニングを可としているが、染色状態をチェックした結果では、水と石油系溶剤のいずれに対しても堅ろう性がなく、染料が溶出することが確認できる。
メーカーは、染色の不堅ろうな天然皮革の使用を避けること。
クリーニングにおける対応として、染色した天然皮革を組み合わせた製品については、水洗い、ドライのいずれにおいても染料が溶け出すことを前提に、使用する洗剤や溶剤に対する染色の堅ろう度をチェックする。
堅ろう性に問題がある場合には利用者にその旨を伝え、処理を断るなど適正に対応すること。
当該品のラベルには、仔羊との表記はあるが、使用されている部位については縫目を解かなければ確認できない。
天然皮革の染色が堅ろう性に欠け、クリーニングで色泣きなどの問題が生じるのは、染色工程に次のような要因があるため。
このほかにも、天然皮革製品は、個体や裁断する部位の異なる天然皮革を集めて一着の縫製品とするため、クリーニング前には目立たない品質の違いなどが、クリーニングすることで色や風合の変化となって表れてくることがある。