一年を通して使用されているウール製品の取扱いについては十分に周知されているはずですが、いまだにフェルト化による収縮などの事故が発生しています。
今回は、着用によるフェルト化を紹介します。
監修/クリーニング綜合研究所
カーディガンの両脇下部分が毛羽立って、編目が詰まったような状態になっている。
着用中の汗と、もみ(摩擦)作用によりフェルト化したもの。
ウールの表面はうろこ状のスケールで覆われており、水分を含むとスケールが開く(図表1)。
この状態でもみ作用等の物理的作用が加わると、スケール同士が絡み合って離れなくなり、毛羽立ちや収縮が生じる。
この現象をフェルト化という。
現品の場合、着用中の汗ともみ作用に原因があるため、クリーニングでの抜本的な防止対策はない。
クリーニングの受付時に、カーディガンやワンピース、ジャケットなどの上衣は脇下やひじ内側部分、ズボンなどの下衣は股下や膝裏部分などを点検して、異常がある場合には利用者とともに確認することが必要。
一般にドライクリーニングではフェルト化は生じにくいと考えられているが、実際にはドライ溶剤中の水分や製品自体に含まれる水分が影響してドライクリーニングでもフェルト化は生じる。
これらに含まれる水分を除去することで、フェルト化は防止できる。
〈予備乾燥〉
製品自体に含まれる汗や水分などを予備乾燥で除去する。
ただし、タンブル乾燥機を使う場合には、タンブルの回転がフェルト化の原因になることがあるため注意が必要。
〈洗浄〉
ドライ溶剤中の過剰な水分や製品自体に含まれる水分が除去されていれば、洗浄によるフェルト化は生じにくい。
ただし、太くて撚りの少ない糸を使ったざっくりとした生地やアンゴラなど柔らかな風合の素材は、特にフェルト化しやすいため、ネットを使って短時間処理するなどの配慮が必要。
〈乾燥〉
水分さえ除去されていれば通常のタンブル乾燥が可能。
ただし、温度が高すぎたり、処理時間が長すぎたりしないように注意する。
〈ウエットクリーニング〉
ウールや獣毛は、水に濡れてスケールが開いた状態であっても、もみ作用を加えないように処理すればフェルト化することはない。