含金属染料中の金属成分には、漂白剤として使用する過炭酸ナトリウムの分解を促進させる働きがあり、ワイシャツのストライプ柄などを損傷させる事故が発生します。
今回は、その具体的な事例を紹介します。
監修/クリーニング綜合研究所
うす紫色地に黒色・青色・白色のストライプ柄のワイシャツ。クリーニング後、前後身頃が脱色しているとの申し出だったが、実際は、黒色のストライプの一部が脆化(ぜいか)し消失している。また、消失部以外の黒色のストライプにも脆化が生じている。
黒色糸の染料中に含まれている銅などの金属が触媒となり、ランドリーで使用した酸素系漂白剤(過炭酸ナトリウム)の分解を促進したため綿繊維が脆化し、着用やランドリーでの摩擦などで消失したもの。綿繊維の脆化は、酸素系漂白剤を使用した処理の繰り返しによって徐々に進行するものと推定される。
ワイシャツ等の製造メーカーは、含金属染料で染色した糸や生地をできるだけ使用しないこと。クリーニングでは、原則として色物に対する漂白剤の使用は避けること。
また、ワンショット洗剤には過炭酸ナトリウムが配合されていることに配慮する必要がある。
※ クリーニング業に関する標準営業約款のクリーニング処理基準では、製品の種類及び素材別のクリーニング処理方法を示しており、その中でワイシャツの色物には漂白剤を使用しないことになっている
過炭酸ナトリウムは、ランドリー用漂白剤として広く使用されている粉末状酸化漂白剤で、40℃前後の水温から漂白効果を発揮しはじめ、効果が穏やかに進行する。
ただし、含金属染料などを使用した染色物では、染料中の金属が触媒となって漂白剤が急激に分解し、繊維を損傷することがある。
染色物に使用されている染料の種類は判別できないため、原則として染色物への漂白剤の使用は避けること。
JIS L 0001の取扱表示では、家庭洗濯での酸素系漂白剤の可否が判断できるようになっているが、ランドリー処理は表示の対象外であることに配慮すること。
家庭洗濯でのワイシャツに対する取扱表示の上限温度は40℃が一般的なため、酸素系漂白剤の使用は可としているものが多い。40℃以上でランドリー処理を行う場合には、酸素系漂白剤の使用は避けること。