モヘヤを混用した生地は、特有のハリや光沢、シャリ感などが好まれ、夏物の紳士用スーツ地などに使われていますが、摩擦や折り曲げなどに対する強度に欠ける欠点があります。
今回は、モヘヤを混用したズボンに発生しやすい破損事故を紹介します。
監修/クリーニング綜合研究所
ズボン後ろ膝付近の折り目部分に破損やキズが生じている。利用者は、折り目に施したシロセット加工に問題があったのではないかと考えている。
着用やプレスが繰り返されることにより、生地が徐々に磨耗して自然発生的な破損が生じたもの。
特に折り目部分は、着用中の摩擦を受けやすいことが原因として挙げられる。
また、シロセット加工による生地の硬化なども一因となっている可能性が考えられる。
自然発生的な現象のため、抜本的な防止対策はないが、硬くてハリやシャリ感のある生地を使ったズボンへの強いプレスやシロセットなどの折り目加工は避けることが望ましい。
モヘヤはアンゴラ山羊の毛。生後6~18ヶ月の毛はキッドモヘヤと呼ばれ、最高級品とされている。
他の獣毛に比べハリと光沢があり、シャリ感のある梳そ毛もう服地や毛足の長いシャギー生地などに適している。繊維は外層が硬く、内層が柔らかい構造になっているため摩擦や折り曲げ、引き裂きなどに対する強度に欠ける欠点がある。
モヘヤを使用していても「毛」と表示されているだけの場合もあるため、硬くてハリやシャリ感のある生地を使ったズボン、シャープな折り目の付いたズボンなどについては、受付時に折り目部分をチェックし、生地が薄くなっていたり、摩耗などがあれば、破損する可能性があることを利用者に説明して了解を得ることが必要。
※ 組成表示とは別に、裾やウエストの内側部分にモヘヤを使用していることを表記した生地が縫い付けられていることもある
羊以外の動物からとれる毛を総称して獣毛と呼ぶ。衣料用としては山羊類、らくだ類を中心に約15種類。獣毛には、羊毛のようにはっきりとしたうろこや捲けん縮しゅく(繊維のちぢれ)のないものもあり、その繊維は表面が滑らかで光沢がある反面、繊維同士が絡み合う縮充性が少ないために組織がルーズなものほど毛羽立ち、脱毛しやすいなどの特性がある。
獣毛のうち、アンゴラ(うさぎ)、カシミヤ、モヘヤ、らくだ・キャメル、アルパカは、組成表示に使用することができる指定用語になっている。