紫外線が染料を分解することにより生じる変色は、クリーニング後の保管において発生することが多い現象です。
今回は、保管中に変色が生じたと推測される事例を紹介します。
監修/クリーニング綜合研究所
ワンピースのスカート部分で、表面に露出している部分が赤みを帯びたような色になっている。
利用者が保管後に着用しようとしたところ、変色に気づいたもの。
色の変化は、表面に露出している部分が主体で、ひだの内側に隠れる部分は変化していないことから、太陽光や蛍光灯に含まれる紫外線により染料が分解して生じた可能性が推測される。
紫外線は、太陽光(日光)や蛍光灯の光に含まれる。太陽光のうち、地球に到達する光は、目に見える可視光(約52%)と、赤外線(約42%)紫外線(約6%)の不可視光がある(図表1参照)。
可視光は「赤、橙、黄、緑、青、藍、紫」の7色で構成され、人はこれによって色を識別している。
波長が200~380nm(ナノメートル)の紫外線は、エネルギーの高い光で、UV-A、UV-B、UV-Cの3種類に分けられる。
生物などに最も有害な紫外線はUV-Cで、ほとんどがオゾン層によって吸収され、地球上には届かない。UV-AとUV-Bは、可視光や赤外線に比べ、強力なエネルギーがあるため、染料や繊維を分解するなど大きな影響を与える。
紫外線による変色には、光の当たる部分が変色する一方で光が遮られて陰になる部分は変色しない、変色している部分としていない部分の境目が明瞭で直線的、などの特徴がある。
紫外線による色の変化は、利用者側での着用や保管中などに生じている可能性が高い。
しかし、利用者はこうした現象を理解していないために色の変化の原因がクリーニング処理にあるものと思い込み、結果的にクリーニング店に苦情を持ち込むものと考えられる。
特に、長期保管の可能性がある品物を返却する際には、直射日光や蛍光灯の光などができるだけ当たらないようにすることなどのアドバイスが利用者への啓発になる。
黒や紺などの濃色品は、変化が目立ちやすいことに加えて、クリーニングで汚れが除去されることにより変化が明瞭になることがあるため、受付および洗浄前のチェックが重要になる。
また、預り品を保管する場合は、紫外線を含まない照明を使用することが望ましい。