ポリウレタン弾性糸はゴムのように伸び縮みする糸で、ストレッチ性が必要なスポーツ衣料のほか、スーツやスラックス、ニット製品など、様々な製品に使用されています。
今回は、ポリウレタン弾性糸が物理的に引き抜けた事故事例を紹介します。
監修/クリーニング綜合研究所
ニットシャツ内側上部に使用されている伸縮性のある裏地の脇や裾部分からポリウレタン弾性糸のフィラメント(後述)が引き抜けて飛び出した状態になっている。
ポリウレタン弾性糸のフィラメントは編み糸のループの中にたて方向に通された構造になっている。
裏地に伸縮性を与えるために使用していたポリウレタン弾性糸のフィラメントが、着用による伸縮・摩擦などの作用、クリーニングでの物理的作用を受けることやドライ溶剤を吸収して膨潤することなどで引き抜けたもの。
現品の場合、ポリウレタン弾性糸のフィラメントが単純に編み糸のループの中を通されているだけの構造で、引き抜けを防止するために必要な構造上の工夫などはされていない。
基本的にクリーニングでの防止対策はない。縫製メーカーなどでフィラメントが引き抜けないようにすることが必要。
繊維には、フィラメントとステー プルがあり、絹のように連続した長繊維をフィラメントという。
フィラメントの使い方には、1 本だけを糸として使う「モノフィラメント」と、複数のモノフィラ メントを集めて1本の糸にする 「マルチフィラメント」があり、通常は、マルチフィラメントを使用 する。
今回紹介した事例では、ポリウレタンのモノフィラメントが使用されている。モノフィラメントの表面は平滑なため、事例のように単純に編み糸のループの中に通すだけの構造では、引き抜けが生じやすい。
一方、綿や羊毛のようなわた状の短い繊維はステープルといい、通常は紡績して糸(紡績糸)として使用する。