一年を通して使用されているウール製品の取扱いについては十分に周知されているはずですが、いまだにフェルト化による収縮などの事故が発生しています。
今回は、着用によるフェルト化を紹介します。
監修/クリーニング綜合研究所
カーディガンの両脇下部分が毛羽立って、編目が詰まったような状態になっている。
着用中の汗と、もみ作用によりフェルト化したもの。
ウールの表面はうろこ状のスケールで覆われており、水分を含むとスケールが開く(図表1)。
この状態でもみ作用等の物理的作用が加わると、スケール同士が絡み合って離れなくなり、毛羽立ちや収縮が生じる。この現象をフェルト化という。
現品の場合、着用中の汗ともみ作用に原因があるため、クリーニングでの抜本的な防止対策はない。
クリーニングの受付で、カーディガンやワンピース、ジャケットなどの上衣の場合には脇下部分、ズボンなどの下衣の場合には股下部分などを点検して、異常がある場合には利用者と共に確認をすることが必要。
一般にドライクリーニングではフェルト化は生じにくいと考えられているが、実際にはドライ溶剤中の水分や製品自体に含まれる水分が影響してドライクリーニングでもフェルト化は生じる。これらに含まれる水分を除去することで、フェルト化は防止できる。