漂白剤を主成分にした洗浄剤による色の変化は、昔からある事故ですが、近年はウイルス感染対策として、次亜塩素酸ナトリウムによる消毒が推奨されていることから、脱色などのトラブルが増えることが懸念されます。
今回は、漂白剤を主成分にした洗浄剤による事故の典型例を紹介し、その対策を考えます。
監修/クリーニング綜合研究所
前スカート中央付近が、ベージュ色から黄色に脱色している。
次亜塩素酸ナトリウムを主成分にした洗浄剤が付着したために脱色したもの。
原因が次亜塩素酸ナトリウムを主成分にした洗浄剤であることは、脱色部に残留している薬品を検出したり、主成分である次亜塩素酸ナトリウムを実際に付けて脱色を再現することで確認できる。
ただし、事故品が水洗いされている場合は、付着物が洗い流されているために薬剤が検出できず、薬剤を検出できた場合でも、「いつ」「どこで」付着したのかを判断する方法はない。
また、高濃度の次亜塩素酸ナトリウムには、セルロース系繊維を脆化させる作用があることにも注意が必要。
漂白剤を主成分にした洗浄剤には、次亜塩素酸ナトリウムや過酸化水素を主成分にした液状のものと、過炭酸ナトリウムを主成分にした粉末状のものがあり、用途別に次のような各種商品が販売されている。
なお、最近「除菌」や「ウイルス消毒」等を謳って販売されている二酸化塩素にも、漂白作用があることに注意したい。
洗浄剤を付着させないことが基本となるが、誰が、いつ洗浄剤を付着させたのかが問題となることから、クリーニングの工程での付着でないことを証明するためには、作業場内に漂白剤や漂白剤が主成分となる洗浄剤は持ち込まないなどの対策も考えられる。
また、利用者には身近にある各種の洗浄剤が事故の原因になることや、衣類に付着した漂白剤等に気づかずクリーニングを機に顕在化する場合もあること、洗浄剤が付着したときはすぐに水で洗い流すことなどを日頃から周知することも有効な対策と思われる。
洗浄剤は、水によるシミ抜きまたは水洗処理で除去する。付着している場所が特定できればシミ抜きで対応できるが、場所が特定できなければ水洗処理で全体を処理する。
シミ抜きや水洗処理を行うときは、それに伴って生じる可能性のある様々な変化について利用者の了解を得ることが必要。