ポリウレタン樹脂は、合成皮革やボンディング加工布、コーティング加工布など様々な素材に使用されており、一見、変化していないように見えても劣化が進行していることがあります。
今回は、バックコーティングに使用したポリウレタン樹脂の劣化による剥離について紹介します。
監修/クリーニング綜合研究所
衣類の状態
全体各所、空気が入ったようにぶくついた状態になっている。外からは確認できないが、生地裏側にはポリウレタン樹脂のコーティングがされている。
バックコーティングが施されたジャンパー
生地に空気が入ったような状態になっている
原因
バックコーティングに用いられているポリウレタン樹脂が長期の使用の間に空気中の水分などによる作用を受けることや、クリーニング処理の繰り返しなどで劣化したことにより、剥離したもの。
生地裏側は全面にコーティングが施され、ぶく
ついている部分は、コーティングが剥がれている
事故の防止対策
ポリウレタン樹脂の経時的な劣化は避けることができないため抜本的な防止策はない。
ポリウレタン樹脂は空気中の水分による加水分解などにより、通常2~3年で劣化することが明らかになっており、クリーニング事故賠償基準ではコーティング品の平均使用年数を2年としている。
ポリウレタン樹脂加工製品全般に対しての注意事項
コーティング加工は、織物や編物の基布にポリウレタン樹脂などを塗布して皮膜を作ったもの。
ポリウレタン樹脂加工製品全般に対しては、次のような配慮が求められる。
- 取扱表示などを参考に、洗える製品かどうかを確認する(水洗い、ドライクリーニングのいずれも不可を表示している製品がある)
- コーティングに使用されている樹脂は組成表示の対象になっていない。ただし、バックコーティングやボンディングなどの製品には、組成表示にポリウレタンが高率で表示されている場合がある。また、バックコーティングは透湿防水やダウンの吹き出しを防止するために使用されていることが多い
- 汚れが付着しやすく、かつ、着用摩擦を受けやすい生地の折返し部分、袖口、裾回り、衿回り、脇下などに異常がないかを確認する(汚れが樹脂の劣化を促進し、着用摩擦で剥離、脱落等が生じていることがある)
- べとつきなどの兆候があるものは剥離等の生じる可能性が高いためクリーニングできないことを伝え、お断りすることが望ましい
- 製品を製造してから2年以上経過している場合には購入の時期に関係なく劣化が進行しており、クリーニング処理で剥離等が生じる可能性のあることを伝える