全ク連は11月12日(土)に、「第8回全国クリーニング大会in盛岡」をホテルメトロポリタン盛岡ニューウイング(岩手県盛岡市)で開催し、全国から291名が参加しました。
東北ブロックでの全国大会の開催は平成23年度に福島県で予定されていましたが、東日本大震災の発生により中止となっています。
そのため、5年の年月を経て開催に至った今大会では「復興・感謝・防災」をテーマに掲げ、被災した東北の街や同業者がどのように現実と向き合い、復興への歩みを踏み出したのかについて伝え、全国の仲間からの支援や励ましに感謝の意を表する場としました。
また今大会の開会式では、東日本大震災の復興半ばに先般の平成28年8月末に発生した台風10号で大きな被害を受けた岩手県の岩泉町と久慈市の組合員2軒に対して本大会からそれぞれ見舞金が贈呈され、岩手県組合を代表して古澤淳理事長が受け取りました。
加えて、ウエルカムメッセージとして東北6県の組合理事長達が東日本大震災の支援に対する御礼と歓迎の言葉を述べる映像が上映されました。
続いて、被災と復興、危機管理をテーマとした講演やドキュメンタリー、復興支援への感謝のプログラムが披露され、最後の大会旗引継ぎでは、東北ブロックから次回開催地の近畿ブロックへ大会旗が手渡されました。
被災当時の記憶と復興の足取りを振り返りながら、共に助け合う組合員同士の絆や組合が行う支援の重要性を改めて知る大会となりました。
開会式で、全ク連・小池広昭会長は「5年前に東北で全国大会を開催予定でしたが、東日本大震災により諦めざるを得なかった。今大会は大震災からの復興という位置づけであり、盛大に開催できて本当に嬉しく思っています。東北の現状、復興の足取りを知り、そして防災の取組みを考える大会としたいと考えています。また今年は平成28年熊本地震が発生しました。その折には皆様から被災組合員および組合に対する義援金をいただいたことに御礼を申し上げるとともに、被災地の一日も早い復興をお祈りしています。そして岩手県と北海道では今夏、台風10号によって大きな被害を受けました。自然災害以外にも社会では様々な課題が生じています。このような状況でもクリーニング業が我々事業者とお客様の双方にとってよい業界となるように、皆様のお力を借りながら課題解決に取り組んでいきます」と挨拶を述べました。
小池会長は挨拶の最後に、台風10号で被害を受けた岩手県組合の2軒の組合員に対して見舞金を贈呈することを発表し、目録を岩手県組合・古澤理事長へと手渡した。古澤理事長は「今回の全国大会では東日本大震災の支援に対する御礼と感謝を表したいと考え、被災した仲間達も参加している。震災当時は何も分からない状態だったところ、組合員、組合、行政の皆様にご尽力いただきここまで来られたことに心から御礼を申し上げる。また、先ほどいただいた見舞金も早速台風で被災した組合員に届けたい。今回の大会は自然災害を知り、今後の防災につなげることをテーマとしている。この意を汲んで参加していただいた皆様に重ねて御礼を申し上げたい」と歓迎の言葉を述べた。
また開会式では厚生労働省・塩崎恭久大臣や岩手県・達増拓也知事、盛岡市・谷藤裕明市長、衆議院・高橋ひなこ議員からご祝辞をいただき、生活衛生業の重要性やクリーニング業界への期待のお言葉をいただきました。
特別記念講演1では「東日本大震災津波からの復興の取り組み状況について」をテーマに岩手県復興局まちづくり再生課・小野寺哲志課長が講演を行いました。
講演ではまず各地の被災状況が紹介された後、『「安全」の確保、「暮らし」の再建、「なりわい」の再生』を柱に据えた復興計画の概要と取組み状況の解説へと移りました。
岩手県では、被災地の復興に向けて津波被災地の土地の嵩上げや防潮堤の整備、低地にある住宅地の高台移転、区画整備、病院や学校の再建など地域住民の安全と暮らしを確保するための事業を進めています。
ただ、被災地域が復興するためには被災者の心と体のケアや一度崩壊した町を再生するための新たなコミュニティの構築といった、被災者に寄り添った生活の再建方法を実行しなければなりません。
また今夏の台風10号で二重被害に遭った住民もいることから、更なる復興支援を行っていくことが説明されました。
講演1の後にはドキュメンタリー映像「被災組合員の当時と今」が上映され、岩手県、宮城県、福島県の被災組合員が当時の様子を振り返り、利用者や仲間の組合員の応援が事業を再開する気持ちを後押ししてくれたこと、再開した店舗あるいは復興支援仮設クリーニング工場で仲間と力を合わせて事業を再開している現在、そして復興の道のりで支えとなった組合と仲間の大切さなどを語りました。
上映の後には「復興支援への感謝」として東北ブロックの理事長および組合員が登壇し、被災組合員を代表して東北ブロック協議会・佐藤一三四ブロック長(秋田県組合理事長)が復興支援への御礼を述べ、会場全員で復興支援ソング「花は咲く」を合唱しました。
特別記念講演2では、「防災危機管理監としての災害対応」をテーマに、岩手県総務部総合防災室・會川雅行防災危機管理監が講師を務めました。
會川氏は、東日本大震災以降にも岩手県で発生している自然災害の中から平成26年に度重なって発生した林野火災と平成28年に被害を受けた台風10号を例に取り、災害の発生状況や県の対応を解説しました。
そしてこれらの災害対応を通じて、平時から積極的に情報を集める「情報収集の重要性」、災害発生時に被災地と緊密な連携を取るため長期間にわたり現地に職員を派遣する「現地対策本部の設置による現地との連携強化」、防災担当者が災害対応に専念できる仕組み作りと平時から訓練する「機能するBCP(事業継続計画)」という3点が防災、災害対策には必要だとまとめました。
加えて岩手県の今後の検討課題として、避難勧告の発令体制や県の支援体制の整備、高齢者など避難能力に不安がある人達が入居する社会福祉施設が山裾などの災害の危険性がある地域に存在しているかどうかといった立地状況の把握と防災体制の確立、河川のハザードマップの見直しによる安全性の向上を挙げ、新たな風水害に対応した体制の構築を目指していることを説明しました。
大会最後に大会旗引継ぎが行われ、東北ブロックから近畿ブロックに大会旗が手渡されました。
近畿ブロック協議会を代表して小倉正基ブロック長(和歌山県組合理事長)が大会旗を受け取り開催受託宣言を行ったのに続いて、次回開催地である大阪府組合・波多野秀三理事長が開催への意気込みを語りました。
また懇親会は、岩手県社交飲食業生活衛生同業組合・西部邦彦理事長率いるバンドによるジャズ演奏をBGMに開場し、全ク連・伊澤勝令副会長と岩手県組合・似鳥博信副理事長の挨拶の後、全ク連・青山亨顧問の乾杯で始まりました。アトラクションでは盛岡さんさ踊りが披露され、その後岩手県の名産品が当たる抽選会が行われ会場は大いに盛り上がりました。
2日目となる13日(日)は視察ツアーを行いました。景勝地・浄土ヶ浜を散策したのち、津波により壊滅的な被害を受けた宮古市田老地区に保存されている震災遺構・たろう観光ホテル跡を見学しながら震災当時の様子について説明を受け、改めて自然災害の脅威と防災の重要性を認識しました。