ベロア調素材は2024年12月に紹介したモール糸と同様に冬物衣料に使用されることが多く、パイルの脱落や色相の変化などが生じやすい素材でもあります。
今回は、ベロア調素材のパイルの脱落を紹介します。
監修/クリーニング綜合研究所
スーツのスカートの前側左右腰付近のパイルが、よこ方向の筋状に脱落し、基布が露出している。
利用者がクリーニングから返却された後に確認したところ、パイルが消失していることに気づき、申し出があったもの。いつの時点で生じたものかは分からない。
着用により繰り返される物理的な作用でパイルが脱落したものと推定され、クリーニングにより拡大した可能性が考えられる。
パイル織物の製造に関しては、摩擦などの物理的作用に対して十分な強度を持たせることが望まれる。
また、パイルの形状にはW型とV型があり、脱落の生じにくいW型の素材を使用することが望ましい。
クリーニングでの受付時には、裾まわりやポケット口の他、特にズボンでは膝裏、上着では衿まわりや衿先、袖口など着用で摩擦を受けやすい部分のパイルの状態を十分に点検する。
それと共に、利用者にはクリーニング処理によりパイルが脱落する可能性のあることを説明し、了解を得た上で処理することが望まれる。
クリーニング処理後、返却前の点検等で変化を確認した場合、直ちに利用者に連絡し、対応を協議すること。
元々は、紡毛織物の表面を毛羽立たせるベロア仕上げのこと。
「ベロア調素材」は、このベロア仕上げを似せて作られたもので、現在では次のような素材も含めて「ベロア」と呼んでいる。
今回の事故品に使われているベロア調素材は、よこ糸でパイルを作るよこパイル織物に該当する。
同じよこパイル織物のコーデュロイは、たて方向に畝ができるのが特徴で、カジュアル衣料に使われていることが多い。
一方、ドレスやコート、装飾品などに使われるベルベットは、たてパイル織物の代表で、光沢が強いのが特徴。
繊維素材としては絹、ポリエステル、レーヨン、綿などが使用される。