クリーニング綜合研究所には、衣料害虫による食害事故の鑑定依頼品が季節を問わず送られてきます。衣料害虫の食害によるトラブルを回避するには、品物を返却する際の情報提供が有効な手段になります。
今回は、クリーニングによって衣料害虫による食害が明瞭になった可能性がある事例を紹介します。
監修／クリーニング綜合研究所
クリーニングに出す前にはなかったキズができて戻ってきたと、お客様から持ち込まれたもの。
起毛の一部が消失し、織地が露出した状態になっている。
衣料害虫による食害を受けたもの。洗浄前の検品では特に目立った異常は認められなかったとのことで、洗浄により食害を受けていた起毛が脱落した可能性も推測される。 原因が衣料害虫による食害であることは、繊維に特有の形状が残っていることから判断できる（顕微鏡写真）。
なお、食害事故には起毛のみが消失するものや穴あき、キズ状になるものなど様々な形状がある。
利用者が衣類を長期保管する際、防虫剤等を適切に使用することが基本となる。
原因が食害と分かっても、食害を受けた時期や場所を特定することはできない。
クリーニング前に受けた食害が洗浄後に明瞭になる場合もあるため、事故がクリーニングによるものと利用者から誤認されないように対処することが必要で、受付時および返却時に異常の有無を相互に確認する。
処理中に異常を確認した場合には速やかに利用者に報告し、必要な対応を取ることなどの重要性は常に指摘されるところである。
衣料害虫による食害は恒常的に発生しているため、利用者に食害を受けやすい衣類や時期などについて注意喚起をすることも有効な対策になる。
繊維を食害する虫の主体は、ヒメマルカツオブシムシ、カツオブシムシ、イガ、コイガの４種類の幼虫。いずれも、ケラチンと呼ばれるタンパク質を分解する能力を持っているため繊維そのものを栄養源として生育することができ、羊毛、毛皮、皮革などを食害する。
イガとコイガは、気温の比較的高い初夏から秋にかけて幼虫が活発に活動し、繊維を食害する。幼虫は巣を作り何匹も固まっていることが多く、成虫は小さな白い蛾になるので比較的発見しやすい。
ヒメマルカツオブシムシとカツオブシムシは夏から翌年の春にかけて幼虫が長期間活動するが、イガのようには目立たずに散らばっているので、知らない間に食害を受けているケースが多い。
