汗で汚れた夏物衣料を扱うことが多くなる時期は、水洗いによる事故も多く発生する傾向にあります。
水洗いによる事故を防ぐには、その品物が水洗いできるかどうかの適切な判断が求められます。
今回はその典型例を紹介します。
監修/クリーニング綜合研究所
薄いピンク地に赤、黄緑、オレンジ色などのドット柄のワンピース。前身頃切り替え部から腹部にかけてと、左脇部などの赤色の柄付近がピンク色ににじんだように
なっている。
利用者からの依頼で汗を除去するために行ったウエットクリーニングによって、赤色の柄の染料が溶け出し、にじんだようになったもの。
現品はレーヨンと絹を混用した素材を使用しており、取扱表示は家庭洗濯とウエットクリーニングの両方が不可になっている。
取扱表示で水洗いを禁じている製品を水洗いする場合は、利用者からの依頼であったとしても、あらかじめ水に対する染色堅ろう度をチェックした上で処理の可否を判断すること。特に濃淡の著しい色柄製品については十分な注意が必要。
汗の除去に部分的な水性処理やウエットクリーニングを選択する場合には、染色堅ろう度のチェックに加えて、次のような事項に配慮を必要とする。
1.水による弊害への配慮
洗たく物によっては、収縮、パッカリング(縫い目付近に細かなしわが生じる現象)、移染、色泣き、変退色、各種加工の脱落など、修正不可能な状態に変化することがある。
このため、予備試験などによる確認を厳重に行うとともに、水による処理を行うことで想定される不都合については、利用者の十分な理解および了解を得てから処理
すること。
2.環境への配慮
過去にテトラクロロエチレンによるドライクリーニングを実施したことが明らかな洗たく物は、テトラクロロエチレンが洗たく水中に溶出して排出される可能性があ
るため、ウエットクリーニングを避けること。
3.素材別の配慮
◦ 毛は、湿潤状態で機械作用が加わることでフェルト収縮するため、水洗いの対応
がされていない製品に対しての機械力はできる限り小さくすること。
◦ 絹は、白化しやすいので特に湿潤時の摩擦を極力抑えること。
◦ レーヨンは、乾燥時と比べて湿潤状態での引っ張り強度が大きく低下するため、
過度の張力をかけないこと。