事故が発生して初めてボンディング加工の生地を使っていたと気づく、というような製品が増えています。ボンディング加工製品であることが分かっていれば、クリーニングによる様々な変化の可能性を利用者に事前に説明できますが、それが分からないためにトラブルが発生することもあります。
今回は、ボンディング加工の事故事例を紹介します。
監修/クリーニング綜合研究所
婦人用コートの右前身頃や左袖の生地が湿ったような状態で濃色になっている。
ボンディング加工に使った接着樹脂が、空気中の水分による加水分解などによって経時劣化したところに、クリーニング処理を行ったため樹脂がシミ出したもの。
濃色化していない部分は、特に変わったところがない普通の織物にしか見えないため、一見しただけではボンディング加工の生地を使用していることは判別しにくい。
生地パーツによる状態の違いは、生地ロットやボンディング加工の状態の違いによるものと推定される。
生地と生地を貼り合わせる加工法。表側と裏側で異なった生地を貼り合わせることで、表と裏で色や柄・生地構造などに変化をつけることができる。
ボンディング加工が開発された初期の接着剤には、酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、アクリル系などの樹脂が使用されていたが、現在はポリウレタンが主体となっている。
ボンディング生地を使用した製品には、組成表示が「表地:表/ポリエステル100%、裏/ポリエステル100%」のようになっているものや、表側の生地と裏側
の生地が異なる色や柄・織編構造などをしているものがある。こうした場合には、ボンディング加工の生地であることが推測できる。
ボンディング加工に使用される接着剤の経時劣化は避けることができず、クリーニング処理での抜本的な防止対策はない。
ボンディング加工の生地を使用していると推測できる場合は、表示を参照してクリーニング処理を行った場合でも、剥離や樹脂のシミ出しが発生する可能性があるこ
となどを利用者に事前に説明し、了承を得ることが望ましい。預かる際には購入時期なども確認するとよい。
また、返却時に異常がなかった場合でも、通常の保管状態で劣化が生じる可能性があることを利用者に伝え、ボンディング加工の特性を理解してもらうことも有効な
対策になる。
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