天然皮革はファッション素材として定番になっていますが、その特性については十分に理解されていない部分もあるようです。
今回は、動物から剥いだ皮を利用する皮革製品に特有の変化について紹介します。
監修/クリーニング綜合研究所
ジャケットを構成している皮革のパーツに色の違いが生じている。色の違いはパーツをつないでいる縫い代によって途切れた状態になっている。
動物の皮を剥いで加工する天然皮革は、工業製品のように均一に染色することができないために生じる現象。皮革製品のこうした特性が十分に理解されていないた
め、クリーニングで生じた変化がトラブルになる。
天然皮革の特性であるため、抜本的な解決方法はない。
天然皮革製品をクリーニングで受ける際には入念なチェックを行い、パーツごとの色の変化がクリーニングをすることによって明瞭になる可能性があることを利用者に伝え、了承を得た上で処理すること。
天然皮革の染色が堅ろう性に欠け、クリーニングで色の変化が生じるのは、次のような要因があるため。
1.衣類などに使用する天然皮革には、内部まで均一に染色する必要があることか ら拡散性の高い染料が用いられる。しかし、拡散性の高い染料は天然皮革との親和性が低いために、十分な堅ろう度を確保できない傾向にある。
2.天然皮革製品は、風合いを重視するために高温染色が実用化されていない。クロムなめしなどにより高温に耐える天然皮革もあるが、こうした天然皮革であっても高温での染色は風合いを悪くする。
3.繊維製品のように染色後に余分な染料を洗い落とす工程(ソーピング)を十分に行えないことがある。
このほかにも、天然皮革製品は、個体や裁断する部位の異なる天然皮革を集めて一着の縫製品とするため、クリーニング前には目立たない品質の違いなどが、クリーニングすることで色や風合いの変化となって現れてくることがある。
特にスエード素材にはこうした変化が顕著に現れやすいため、利用者に対しては十分に理解を求めることが必要。
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