これからの季節は、汗と紫外線の複合作用で染料が分解されることによる変色の苦情に注意が必要になります。
今回は、プロのクリーニングとして可能な限り汗を除去することが望まれる事例を紹介します。
監修/クリーニング綜合研究所
茶色のシャツの両脇下が輪ジミ状の形でみどり色に変色している他、背中や袖など広範囲に斑状の変色がある。
着用中に付着した汗の成分がドライクリーニングだけでは除去されずに徐々に蓄積し、太陽光中の紫外線が作用したために染料が分解して変色したもの。
変色部分には、塩分やアンモニア、たんぱく質など汗に含まれる成分が多量に残留していることが確認できる。気温が高く、日差しが強い夏場は衣類に付着した汗から水分だけが蒸発し、塩分やアンモニア、たんぱく質が残留、蓄積することが繰り返されるためと考えられる。
今回のシャツには水洗い可能の表示がされていることから、水洗処理をしていれば苦情を回避できた可能性が考えられる。
汗には環境気温が高い時に出る体温調整のための温熱性発汗と、精神緊張時に手のひら・足裏などに生じる精神性発汗の2種類がある。
汗の成分は発汗の部位や個人差などにより異なるが、水分が98%以上で塩化ナトリウム、尿素のほか尿酸、乳酸、アミノ酸などの有機酸やアンモニア、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどを含んでいる。
これら、汗に含まれる主要な成分は水溶性であるため、付着後、早い段階で水洗処理などを行うことによって除去することができる。
汗汚れはできるかぎり除去すること。汗汚れの付着が予測される製品が持ち込まれた場合には、受付の段階で利用者に着用頻度や着用状況などを確認し、水洗処理での除去が望ましいことを伝えて処理することがクレームの防止を図る上で有効な手段と考えられる。
ただし、水洗処理を行う場合、収縮や色の変化、風合いの変化など可能性として考えられる問題については事前に説明し、了承を得ておくことが必要となる。
また、水洗処理が困難な製品には、シミ抜きやスチームスポッターによる処理などで対応することになるが、完全な除去は難しいことを説明するようにしたい。