天然皮革は、ブランドロゴが入ったパッチや肘当て、衿裏などに部分使いされていることがあります。
今回は、天然皮革からの色泣きを紹介します。
監修/クリーニング綜合研究所
台衿の後ろに部分使いしている茶色の天然皮革から染料が溶け出し、周辺の生地を汚染(=色泣き)している。
台衿の後ろに部分使いしている茶色の天然皮革から染料が溶け出し、周辺の生地を汚染している
表示を参照して石油系ドライクリーニングを行ったところ、天然皮革の染色が不堅ろうであったため、染料が溶け出して周辺の生地を汚染したもの。取扱い絵表示では、水洗いを禁止して、石油系溶剤でのドライクリーニングを可としているが、染色状態をチェックした結果では、水と石油系溶剤のいずれに対しても堅ろう性がなく、染料が溶出することが確認できる。
メーカーは、染色の不堅ろうな天然皮革の使用を避けること。
クリーニングにおける対応として、染色した天然皮革を組み合わせた製品については、水洗い、ドライクリーニングのいずれにおいても染料が溶け出すことを前提に、使用する洗剤や溶剤に対する染色の堅ろう度をチェックする。堅ろう性に問題がある場合には利用者にその旨を伝え、処理を断るなど適正に対応すること。
天然皮革の染色が堅ろう性に欠け、クリーニングで色泣きなどの問題が生じるのは、染色工程に次のような要因があるため。
① 衣類などに使用する天然皮革には、内部まで均一に染色する必要があることから拡散性の高い染料が用いられる。しかし、拡散性の高い染料は天然皮革との親和性が低いために、十分な堅ろう度を確保できない傾向にある。
② 天然皮革製品は、風合いを重視するために高温染色が実用化されていない。クロムなめしなどにより高温に耐える天然皮革もあるが、こうした天然皮革であっても高温での染色は風合いを悪くする。
③ 繊維製品のように染色後に余分な染料を洗い落とす工程(ソーピング)を十分に行えないことがある。
このほかにも、天然皮革製品は、個体や裁断する部位の異なる天然皮革を集めて一着の縫製品とするため、クリーニング前には目立たない品質の違いなどが、クリーニングすることで色や風合いの変化となって現れてくることがある。
特にスエード素材にはこうした変化が顕著に現れやすいため、利用者に対しては十分に理解を求めることが必要。