冬物衣料のジャンパーやコートには、衿周りや袖口などに毛皮や合成毛皮(フェイクファー)などを装飾しているものが多く出回っています。
今回は、装飾用のフェイクファーのパイルがスチームでの仕上げにより収縮した事故事例を紹介します。
監修/クリーニング綜合研究所
ケープのフードや身頃の縁に使用している合成毛皮の毛が短く縮れ、固まったようになっている。
スチームによる仕上げが原因で、合成毛皮を構成しているアクリル系繊維が熱収縮したもの。
アクリル系繊維は、アクリルに塩化ビニルを化学的に結合させた繊維。
アクリルは、湿潤下70℃前後で物理的な性質が大きく変化する。
アクリル系繊維はアクリルよりもさらに耐熱性が劣ることから、タンブル乾燥や仕上げの熱によるトラブルに注意を必要とする。
アクリル、アクリル系の合成毛皮に60℃以上の温度になる処理は避けること。
合成毛皮は、パイルの外観や風合いをフォックスやラクーンなど様々な種類の天然毛皮に似せたもの。
裏側には織または編構造の基布が確認でき、一見して合成品であることが分かる。天然毛皮と同様にコートやジャットに縫製されたり、衿回りや袖口の飾り、コートのライナーなどに使用されることが多い。
合成毛皮に多く使用されるアクリルおよびアクリル系繊維は、染色性もよく様々な柄を表現することができ、耐薬品、耐カビ性にも優れている。
このため、天然毛皮と比較して扱いやすく、その雰囲気を安価で気軽に楽しむことができるが、熱の影響を受けやすいものが多いことから、受付や取扱いでは次のような注意が必要。
着用による毛倒れや毛乱れ、衿・裾回り・袖口などに擦れ、脱毛などがないかを確認する。
事故部の繊維には種々の変化が生じている。写真左が正常部、右が事故部。
※情報をご覧いただくためにはAdobeReaderをダウンロードしてください。